経験を積んでも成長が実感できない理由は、「経験教」にハマっているから

経験を積むことは良いことです。
本を読んだりセミナーに行ったりするよりも
経験の中で得ることが多いですよね。

このことは過去の偉人たちも言葉を残して
経験の大切さを後世に残しています。

人生は、経験しなければ理解できない教訓の連続である

エマーソン(思想家)

経験を積んだものは易者よりも多くのことを知っている。

ファイドロス・古代ローマの寓話作者

一方で私が企業のマネジメント層からは
「経験は積んでいるのに成長している実感がない」という声をもらうことがあります。

毎日、メンバーのマネジメントを行っているマネージャーのAさんですが
日常の仕事の中でこんな経験をしている、という認識があります。

「毎週メンバーと1on1をしている」
「1on1ではメンバーのやりたいことを明確にしていってる」 
「メンバーの案件に同行をしながらフィードバックもしている」  

けど・・・1on1やフィードバックが上手くハマって成果に現れている気がしない

経験には2つの種類がある

この原因は「経験」を二つに分解すると見えてきます。
一つ目は「思い出経験」です。
つまり経験しっぱなしで「あんな経験したな」と思い出すだけのものです。

二つ目は「学習経験」というもので、振り返った時に「あの経験からこんなことを学んだな」と
再現性のある学びを抽出できている経験です。

マネージャーのAさんが「たくさん経験しているのに学びを感じられない」理由は、
「思い出経験」になってしまっているからなんです。

「思い出経験」は「経験=善」と無意識に考えているとも言えます。
いわば「体験教」という宗教にハマってしまっている状態なのではないかと自問自答すると
「思い出経験」を「学習経験」に変換する緒が見つかります。

思い出経験と学習経験の違い。いかに学習経験をつくるか

では、「思い出経験」と「学習経験」を分ける要素は何なのでしょうか。
「気づき」「学習」「調整」の三つです。

「思い出経験」にはこの三つはありません。
ただ「こんなことがあったな」と思い出すだけなのです。

一方で「学習経験」は要素分解すると「学習経験=経験+気づき+学習+調整」となります。

それでは「思い出経験」を「学習経験」に変換する三要素をそれぞれ見ていきましょう。

「学習経験=経験+気づき」は正しい?

経験に「気づき」を追加すると、経験したことに意味を感じられるようになります。

「気づき」とは下記のように経験を振り返ることです。

  • 何が上手くいったのか?なぜうまくいかなかったのか?
  • どうしていけばいいのか?

つまり、「成功した要因or失敗した原因」を言語化し、次の行動を導き出せるかどうかです。

成功者たちの言葉にもトライアンドエラーを繰り返すこと、失敗すること、振り返りを行うことの重要性を見つけることができます。

例えば、マネージャーが「昨日、メンバーとの1on1を行った」という思い出経験があります。その1on1に対して、上手くいかなかった、という認識を持っている人がいます。

上手くいかなかったのは「メンバーが、資料作成のことを相談してくれた時に、間髪入れずマネージャーが『こうやってやればいいよ』と言ってしまったところから、流れがギクシャクし始めたんだよなぁ。なにか言いたいことが他にも会ったんじゃないだろうか?」という事に気づきます。これが気づきです。

人間が賢くなるのは、経験によるのではなく、 体験に対処する能力に応じてである

ジョージ・バーナード・ショー(劇作家)

危機につながるような致命的な失敗は絶対にしてはならないが、 実行して失敗するのは、実行もせず、分析ばかりしてグズグズしているより余程良い。失敗の経験は身につく学習効果として財産となる

柳井正(ユニクロ社長)

トライ・アンド・エラーを繰り返すことが経験、蓄積になる。 独自のノウハウはそうやってできていく

井深大(ソニー創業者)

ただ、「気づき」を追加するだけでは、「学習経験」とまでは言い切れません。欠けているピースを埋めていきましょう。

「学習の4つの方法」を知ると、成長が加速する

経験に「学習」を足すことで、「学習経験」に近づきます。例えば、先程のマネージャーが、他のチームビルディングが上手いマネージャーからの指摘や本を読み「そうか、アドバイスをするにしても、ちゃんと相手のことを先に理解した上でしないと、アドバイスを受け取ってくれないのか!」「アドバイスを求めているわけじゃなく、混乱している状態をどうにかしたい、ということを受け止めて上げる必要があったのか」という学びが生まれます。

この「学習」というフェーズはとても奥が深く、自分の経験から気づくという「内から学習」、理論や本、フィードバックから学ぶ「外から学習」に分かれていきます。今回の記事ではお伝えしませんが今後別の記事でお伝えしていきたいと思います。

「学習」を最大にするためのコツを何個か紹介させていただきます。

学習の方法1 フィードバックをもらう

フィードバックは、家を出る前に自分の姿鏡で自分の姿を確認するような行為に似ています。自分の行為や振る舞いを客観的に人からフィードバックをもらう事で、気付きと学習の刺激として受け取ります。

  • メンバーに最後の5分で「1on1はどうだった?なにか気づきにつながった?この質問って効いた?」
  • 別のマネージャーに「この前の1on1でこんなことがあったんですけど、Bマネージャーだったらどんな対応をしますか?」

など。

学習の方法2 モニタリング・レコーディング

モニタリングとレコーディングは、ダイエットの時に体重計に乗るような行為だと思ってください。毎日体重計に乗り、体重や体脂肪率を見ていくことで、自分の状態が具体的に分かるようになります。これがモニタリング。上手くいっている/いっていないの自覚が生まれやすくなります。レコーディングは、その記録を取り続けていくことです。1ヶ月体重を記録(レコーディング)していくことで、振り返りや改善点に気づきやすくなります。

学習の方法3 本を読み、理論や技術を学ぶ

自分の経験から学ぶこともとても重要です。しかし、意外と自分の経験はすでに先人たちが踏んでいる轍だったりもします。そういった過去の先人がまとめている本や論文などから、学び、気づく、ということです。

自分の経験が紐付かないと学習にならないことは絶対です。ただし、何でもかんでも経験しないとわからない、という経験至上主義に陥ってしまうのはそれはそれでもったいないので、効果的に本や理論から学ぶ、という視点も取り入れていきましょう。

動画などで情報を探す、研修やセミナーを受ける、といった内容もこの学習方法に当てはまります。

学習の方法4 薫陶(くんとう) ※先人から生の教訓を学ぶ

これは、本やセミナーなどではなく、先を生きる先輩から生の体験談や教訓を知っていく行為です。自分のメンターとなるよううな人を数人作っておいて、定期的に話をしに行くだけでも、十分な気づきを得ることにも繋がります。

「調整」によって「学習経験」は最大化し、行動に変化が生まれる

体験し、振り返ることの意味について考えてきました。でも、これでは「本当に成長しているか不安です」というAさんの不安はまだ払拭されていません。

最後に必要なピースは「調整 Ajust」であり、これは「学習経験」を最大化するものです。

ここでいう調整とは
・次の体験に向けて、どんな行動をしていくのか
・意識的に、どんな体験をしていけばいいだろうか
・その体験をする意味や目的は何があるだろうか
といった点を明確にすることになります。これを行うことで、単なる「学習経験」を最大化することができ、●学習経験を最大化することで得られるメリットが欲しい●になります。

「調整 Ajust」を分解して考えていきたいと思います。

調整では、意識的に行っていく必要がある事は、自分の動機づくりを明らかにすることや次の経験でどのような行動をするのか、仮説を立てることを意識的に行うことです。

人間は、意識しないとこれまでといつもの行動を振る舞ってしまいます(恒常性機能ホメオスタシスと言ったりします)。

意識的に、いつもとろうとしていた行動から変えていきましょう。

今回のマネージャーのケースであれば、「次の1on1では、メンバーの話を聞ききるということを意識してみよう。今までは私が半分はしゃべっていたので、2割以下にしていくことを目標にしてみよう。すぐアドバイスしたくなるのが私の悪い癖になっているので、そのときはぐっと堪えることを意識してみよう。これができればメンバーとの信頼関係も高まり、チームのパフォーマンスUPに繋げられる」といった形で次のアクションに対する具体的な動機形成やアクションプランを創り上げていくことです。

学習経験を最大化することをラーニングスパイラルと呼ぶ

この「ラーニングスパイラル」を回していくことが重要です。

冒頭のAさんが下記のように「学習経験の最大化」をスパイラルで表すと、下記のようになります。

  • 「気づき」を追加すると)この前の1on1で上手くいったのは、メンバーに対して気づきを与える質問をできたことだ。だけど行動にしっかりつなげきれなかったなぁ。
  • 「学習」を追加すると)そうか、行動につなげるためには、アドバイスするよりも、自分自身で気づいたほうがメンバーの自発的な行動につながりやすいのか。
  • 「調整」を追加すると)「次の1on1では、メンバーに気づいてもらう、という点ができてなかったから、アドバイスではなく質問を投げかけよう。あとはメンバーに直接1on1を良くするために一緒に何ができるか効いてみよう」
  • 「学習経験の最大化状態」)※1on1のとき「あ、今このメンバーは自分で考え込んでいるんだな。『なにか次に繋げられそうな気付きはある?』って聞いてみようかな。」

投稿者プロフィール

中村勇気
中村勇気two edge ,LLC founder |パーソナルコーチ
two edge,LLC代表/人生を研ぎすます「WHEN EDGED」編集長/才能や価値観のパーソナルトレーニングプログラムSelfEdge提供中